カムロン・サムブンナーノン / เติมส่วนที่ขาด 33

“เติมส่วนที่ขาด” シリーズ、その意味は英訳すると “fill in the missing parts” 〜 “足りていない部分を埋める” といった意味だそうです。つまり、それまでCD化されていなかったタイ・ポピュラー音楽の黎明期録音を復刻したシリーズ、ということになるんでしょうね。未だルークトゥン(田園調歌謡)とルーククルン(都会派歌謡)の区別が曖昧だった頃、40年代末頃から50年代を通じて行われた初期タイ歌謡音源のIMF レーベルのCDシリーズ、今後ポツポツと紹介させていただきたと思っています。

サブタイトルは「夢見る若者」ということで、バンコクはサンパンタウォンで(スパンブリー生まれという説もあり)1920年代生まれ、1969年に亡くなってしまったルーククルン黎明期を代表する男性歌手にして俳優でもあった、カムロン・サムブンナーノンの初期SP音源集となります。デビューは18歳の時、ラジオ・ドラマで「農夫の花嫁」という曲を歌い一躍有名になったそうです(本CDには収録されず、あくまでも“足りていない部分を埋める”というCDシリーズの主旨からすれば、らしい、といえば、らしいですね)。
北米の歌手、ハンク・ウィリアムス(カムロンより3つ年下ですが、15歳でデビューしているので活躍した時期はいっしょ、1953年に早逝しましたが、未だ別格の人気を持つカントリー歌手)のスタイルに影響され、ヨーデル唱法なども披露していました。また、タイの政治体制や、宗教的な権威層による不公平や矛盾に対して率直に反対し、そのことで、当局によって公演を差し止められ、逮捕にまで至ったこともあります。そうした正義感において、貧しい労働者階級の目線で歌ったカムロンの残した曲の数々は、後年登場したカラバオをはじめとする、プロテスト・ソングも歌ったプレーン・プワ・チーウィットのアーティスト達にも影響を与えたとされています。
そのキャリアの絶頂は、40年代半ばから60年代前半、
その後、阿片中毒となり1969年に亡くなっています。

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