大工哲弘のマスターピース、2013年遂に登場。
津波、圧政、辛苦を唄と踊りで乗りこなしてきた’八重山人’の誇り、
ここに音となって、永遠に刻まれました。
「悲しくてやりきれない」「星影のワルツ」など名曲も収録。
久保田麻琴プロデュース。全13曲〜久保田麻琴氏によるライナー・大工哲弘による曲解説付き
1. 黒島口節
2. 弥勒節
3. 望郷哀歌
4. 星影のワルツ
5. 猫ゆんた
6. おやどのために
7. 月出ぬはなむぬ
8. 鮪に鰯
9. 安里屋ゆんた
10. 八重山乙女の数え歌
11. 生活の柄
12. 六調節
13. 悲しくてやりきれない
“夕焼け楽団” “サンディー&サンセッツ”等、日本のロックを先導し、またライ・クーダーを始め海外のミュージシャンとの親交もあつく、昨年は宮古島の神歌をテーマにしたドキュメンタリー映画「スケッチ・オブ・ミャーク」が日本のみならず世界中で話題となる等、アーティスト、プロデューサーとしても活躍する久保田麻琴が今回手がけるのは、昨年、デビュー45周年を迎えた八重山島唄の第一人者、大工哲弘。
何百年にも渡り歌い継がれてきた優しくブルーな八重山民謡から、高田渡の名曲「生活の柄」「鮪に鰯」や千昌夫の「星影のワルツ」等、今の日本人の心に響く歌と響きが散りばめられた沖縄音楽史上、もっとも重要な名盤が誕生しました!
参加ミュージシャンは、大工苗子、久保田麻琴、SAKEROCK、星野源等で活躍中の若手ドラマー伊藤大地、パスカルズのロケット・マツという響きのマエストロたちが勢揃い。
【ライナーノーツ】
我々日本人は気が付いたら全く抜き差しできない試練の時期に突入してしまったようだ。理由やきっかけのことは言うまい。掘れば掘るほど弛んでいた自分たちが明らかになるだけだからだ。
今回のアルバム『BLUE YAIMA』(〈BLUE〉はブルースの〈ブルー〉と海の〈青〉、〈YAIMA〉は〈八重山〉の地元での発音である)、南島のことはすべからく柔らかい感覚で受け取りたいので、宮古は〈MYAHK〉、八重山は〈YAIMA〉というわけである。蜜月なのか格闘なのかは分からないが、宮古との濃密な5年間の後、いよいよ満を持して沖縄のみならず現代日本を代表する素晴らしい唄声の持ち主、マエストロ・大工哲弘にお出ましいただいたわけだ。
今日の我々が未曾有の災難に見舞われていることは先に述べたが、それを言うならば先島諸島、特に八重山は1771年の明和の大津波により、3万人の人口が約半分になってしまった。喪失した部分を埋めるべく、おそらくは沖縄や奄美など他の南西諸島からも移住者がやってきた。小さな波照間島でさえ、本来住んでいた人たちに加えて久高島や遠くは徳之島から移ってきた人々もいた。聞くところによると宮古島のクイチャー(沖縄で言うカチャーシのような踊り)は竹富島にも残っているそうで、宮古から竹富に移り住んだ人たちが持ち込んだのだろう。こういった短期でマルチな移住は、大津波以降の八重山人の控えめで奥ゆかしい性格形成には何らかの影響を与えているのかもしれない。また、宮古人から見ると八重山人はクールな印象があるそうだが、そこには津波による移民が多かったこと、そして山と谷が入り組んだ地形からコミュニティー同士の関係性が希薄だったことが関係しているのだろう。宮古は山や谷がなく地形がフラットだったため、摩擦し合いながらも協力/共存していかざるを得ないわけだ。本来、宮古や八重山では村が変われば言葉が通じなくなるほど、独立した方言が生きていた。遠いルーツを持った移住者が心を通い合わせるには、唄と踊りが殊更重要だったのではないか。唄と踊りの島、八重山はこうして不幸な災害と莫大な損失、それに加えて理不尽な人頭税という辛苦を、力を合わせて乗り切ってきた。そして明和の大津波後100年以上かけて元の人口を取り戻した。
そんな八重山人の粘り強さと力強さを象徴するような大工哲弘さんと苗子さんの唄を心して聴きたい。そして今、大打撃を受けたヤマトンチュの苦しみと哀しみを唄で癒すべく、別れと悲しみの曲を私からリクエストさせていただいた。“おやどのために”はリングリンクスの『小笠原古謡集』で知った小笠原古謡。小笠原には悲しみと柔らかさが同居した素晴らしい唄が残っているため、大工さんの唄声と合うのではないかと考えたのだ。また、千昌夫の“星影のワルツ”は私ももともと好きな曲で、大工さんの唄を聴いているうちに〈この人は千昌夫が好きなんじゃないか?〉と思い浮かび、本人に尋ねたところドンピシャ。八重山人として“星影のワルツ”のような別れの唄を歌うことに抵抗があったようだが、大工さん以外誰も歌えないだろう名唱となった。また、大工さんのような素晴らしい唄声の持ち主に“悲しくてやりきれない”を歌っていただくことで、今は亡き加藤和彦さんの曲も生き続けるのではないかと考えた。大工さんには心からお礼を述べたい。
(久保田麻琴)
大工哲弘×久保田麻琴スペシャルインタビュー〜『BLUE YAIMA』を語る〜
【参加ミュージシャン】
大工哲弘:唄、三味線、太鼓
大工苗子:唄、琴
with
久保田麻琴: Guitar, Bass, Keyboards Back Vocal and Beat
ロケット・マツ:Accordion, Piano and Keyboards
伊藤大地: Drums and Whistle
ハーニーズ佐良浜:Chorus on Track 9
東京ローカル・ホンク:Chorus on Track 13, 8
高円寺飛鳥連 Taiko on 7
【レコーディングクレジット】
Recorded, Mixed & Mastered by 久保田麻琴
Engineers: 林原 正明、栄田 全晃、和田 維純、井口進
Recorded at Cricket Studio Tokyo, Alchemy Studio Yokohama, Groove One Agarihama Studio Okinawa