瑞姫 / 河内音頭 櫻川と黒鷲 ~ 幡随院長兵衛傳より

曲師瑞姫(たまき)が河内音頭に挑戦!
浪曲で鍛えたノドと節回しは圧巻。
そして、河内音頭〜チンドン〜ジャズ・シーンで活躍するメンバーと、一発録りで録音された熱量とグルーヴ。まさに聴いて良し、踊って良し!

◆モノガタリの世界
本作は、江戸時代初期の代表的な侠客で、町奴(まちやっこ)の代表格である幡随院長兵衛と対立する旗本奴(はたもとやっこ)・水野十郎左衛門(1630-1664)、それにこの唄のタイトルになっている「櫻川と黒鷲」という二人の力士の物語です。時代は、関ヶ原の戦いから約50年経った正保時代(1648年頃)の話で、その時代、若い旗本やその家来などが旗本奴と呼ばれ徒党を組み乱暴をはたらく一方、幡随院長兵衛(1622?-1650?諸説あり)を代表とする町奴との争いが、大きな問題となっていました。
櫻川を贔屓する長兵衛、黒鷲を贔屓する水野十郎左衛門の二人がお互いの面子をかけて挑む一戦。その軍配はいかに、そして二人の結末は…。

◆演奏について
プロデューサーは、節の魔術師山中一平。全編書下ろしとなった本作の節付けをすべて行うとともに、浪曲師瑞姫の節の指導を本番まで続けました。
また、録音メンバーは、関西を拠点に活躍するジャズベーシスト兼作曲家の東ともみや、河内音頭シーンで活躍する代表的な三味線ニスト虹友美、河内音頭界でアグレッシヴなギターでは右に出るものがいない名人生駒竜也が参加。「河内音頭櫻川と黒鷲(下)」の後半や「浪花慕情」などでも、河内音頭ではとても珍しい、少しクランチ気味のギターサウンドとともに、そこに飛び込んでくる三味線のアンサンブルがとても面白い仕上がりです。また、太鼓の赤江真理子の太鼓の抜けの良い音とコバチ※(胴本体の部分を打つ。カッカッという音になる。)で河内音頭らしいグルーヴ感を感じさせる楽しい作品となりました。お囃子には、歌手の生駒尚子とプロデューサーを務めた山中一平が参加。「河内音頭浪花慕情」では、男声ひとりのお囃子となっていて、こちらも聞き所満載です。
◆浪曲師瑞姫と河内音頭
かつて1960年代にはローオン・レーベルを中心に浪曲師による河内音頭・江州音頭も数多くリリースされ人気を博しました。しかしながら、1980年代に入って、河内音頭自体のレコード発売が減少し、浪曲師によるレコードの発売はほとんど見られなくなってしまいました。
今回、河内音頭に挑戦した瑞姫(たまき)の本作は、浪曲師による河内音頭としても随分久しぶりの作品となりますし、東京の浪曲界からは、中村富士夫以来約46年ぶりのリリースとなります。そして瑞姫は、東京生まれの東京育ち。身内に関西の縁者がいるわけではありませんので、そういう意味でも、本作は、東京都出身浪曲師による異色の河内音頭への挑戦となります。
本作では、セリフ廻しに定評のある瑞姫の語り口調は、河内音頭のリズムの中で活き活きと表現され、最近の河内音頭取りの録音では聞かれることの無かったストーリーを身近に感じさせる作品に仕上がっています。また、浪曲で鍛えたノドと節回しは圧巻で、音域の広さを使って自由に唄う本作は、上下合わせて35分という長尺の河内音頭であることを感じさせない内容となっています。

■曲目
1. 河内音頭櫻川と黒鷲(上)  18:10
2. 河内音頭櫻川と黒鷲(下)  16:50
3. 河内音頭浪花慕情   5:51
4. 河内音頭櫻川と黒鷲~枕より 4:39

【瑞姫(たまき)TAMAKI プロフィール】
東京都江戸川区出身。大学卒業後、アパレルメーカー勤務を経て、1993年浪曲師二代目東家浦太郎に入門。「太田ももこ」の芸名で修行を重ね、97年4月東京芸術劇場で名披露目公演の成功で注目を集め、テレビ・ラジオにも多数出演するとともに、浅草木馬亭や横浜にぎわい座、国立演芸場等を始めとし全国の舞台で積極的に活動を展開。
また、公演活動のほか勉強会の開催、浪曲教室講師も務めつつ、浪曲への飽くなき可能性への探求心から、浪曲劇や人形劇、新作落語やコントとのコラボレーション、音頭や甚句など諸芸への挑戦を続ける。そして、更なる高みを目指して女流浪曲の第一人者松平洋子に師事し、2011年名を「瑞姫(たまき)」に改め、より次元の高い浪曲の実現に向けて日々取り組んでいる。
音頭については、12年頃から浪曲の源流を学ぶため、貝祭文の第一人者である二代目櫻川雛山に師事し、江州音頭を身につけ、14年には伊賀七夕フェスタに音頭取りとして出演。17年頃から台本を徹底的に洗い直し、江州音頭や河内音頭を取り入れた瑞姫ならではの特徴ある節遣いの浪曲作品を展開。そして、19年3月から山中一平に河内音頭の本格的指導を受け、本場大阪の盆踊りやすみだ錦糸町河内音頭大盆踊りに出演した。

■録音メンバー
瑞姫 TAMAKI 音頭(Vocal)
赤江真理子 AKAE Mariko 和太鼓(Japanese Drum)
東ともみ AZUMA Tomomi ベース(Bass)
虹友美 NIJI Tomomi 三味線(Syami-sen)
生駒竜也 IKOMA Tatsuya ギター(Guitar)
山中一平 YAMANAKA Ippei お囃子(Chorus)
生駒尚子 IKOMA Naoko お囃子(Chorus. Track #1, #2, #4)

録音 CSE Recording Studio
Producers : 山中一平&いちばけい
Recording & Mixing : 藤塚雄一(CSE Recording Studio)
Assistant Engineer : 黒石采華
Mastering : 橋本陽英(AUBRITE MASTERING STUDIO)
Photo : 上本紀子、Each Bar Kei
撮影協力: 喫茶野ざらし、矢先稲荷神社
Design : Each Bar Kei
Coordinator : 刈谷仁路志(株式会社下町通信社)

〜メーカーインフォより

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