SHIN SASAKUBO / GUITARRA

★笹久保 伸 / ギター

音楽以外に映画監督、写真家、美術家など多彩な活動を続ける笹久保伸。そんな笹久保伸が原点に立ち戻って制作した、完全ギター・ソロ・アルバム。アナログ・マルチ・16tr・テープ録音。

●2004年~2007年のペルーでの活動(音楽の勉強とアンデスを中心とした文化の研究、演奏活動とレコーディング)を経て帰国後、現代音楽家としての活動、秩父前衛派としての映画製作、写真集『武甲山 —未来の子供たちへ—』の制作や美術作品制作などなど、多角的に活動を展開してきた笹久保 伸。
●ギタリストとしても、藤倉 大、高橋 悠治、リカルド・モヤーノ、ヤマンドゥ・コスタなど世界的なミュージシャンとの共演を果たしてきました。
●そんな多彩な活動のなか、笹久保の原点であるギター演奏に絞って制作したのが、通算27枚目となる本アルバムです。
●音楽家としての原点であるアンデス音楽から自作曲まで、笹久保伸にしか出し得ない世界を全編で展開。全ての曲を、重ね録りすることなくギターの完全ソロで演奏しています。
●音質にもこだわった、16チャンネル・アナログ・テープ録音。(メーカーインフォより)>★

<以下、笹久保自身による簡単な曲目解説>
1. Paqcha sirena (Tradicional de Ayacucho)
人魚の歌
ペルーのアヤクーチョ地方に伝わる古い民謡で、タイトルを直訳すると「滝の人魚」
アンデスの川や滝には人魚(精霊)がいて、人魚は音楽家に不思議な力を与えるという言い伝えがある。実際に今でも音楽家や踊り手たちは呪術的な力を得るために滝へ行き捧げ物をしたり儀式をしたりしている。
それはいわゆる民間信仰の風習の一つ。
人魚、人魚、滝の人魚…という歌詞から始まる。

2. Hierba silvestre (Edith Lagos/Luis Salazar)
野草
アヤクーチョの革命家エディ・ラゴスの詩による音楽。
アヤクーチョ地方は1980年代に反政府民衆群による革命運動が起こった。のちにそれはゲリラ=テロリストと呼ばれることになるが、当初は貧しい農村から社会構造を変えようという動きに知識人をはじめとする多くの民衆がそれを支持し次第に武装化していった。詩は「純粋な香りを持つ野草たち、私と一緒にこの道を歩いて欲しい」に始まる。
作者のエディ・ラゴスは1982年に政府軍との戦いにより暗殺されている。享年20歳。

3. Jauja (Juan Bolívar)
ハウハ町
ハウハはペルーの中部山岳地域フニン県にある町の名前。
この曲はペルーでもよく知られるご当地ソング的な音楽。

4. Hualchaquito (Tradicional de Ayacucho)
小鳥
13歳の頃に知人Fさんからもらったカセットテープでペルーアンデスのギタリスト
Daniel Kirwayoの演奏を初めて聴き、その独特な演奏に衝撃を受けた。
その後ペルーでKirwayoと出会い3年間ギターを教わり、友人として過ごした。
ここに録音したのはDaniel Kirwayoが弾いていたアレンジで、これを弾くと彼が隣で一緒にギターを弾いているような気がして、もう二度と戻らない音楽や、あの過ぎた時間を思い出す。
Kirwayoはとにかく不思議なギタリストだった。

5. Paseo pin (Shin Sasakubo)
ピンの散歩
ピンはうちのうさぎで、よく山を散歩した。

6. Lilium maculatum thunb (Shin Sasakubo)
ユリの記憶
この数年間、破壊されゆく秩父の山「武甲山」を研究してアートのアイデアにしたり映画にしたり写真撮影をしてきた。
2016年、武甲山で38年ぶりに絶滅危惧種植物「ミヤマスカシユリ」の自生地が発見された。
武甲山は毎日ダイナマイトで爆破され続ける。動き出したら止まらない坂道をくだり続ける社会の車輪をみながら自分はこの町で育ち、今日もここで子供たちが育つ。

7. Llorando se fue (Ulises Hermosa)
泣きながら
ロス・カルカスというグループが歌いヒットしたかつてのボリビアの音楽。
「愛もなく私一人だけを残して、泣きながら去っていった」の歌詞に始まる。

8. Nevados eternos (Daniel Kirwayo)
永遠の雪山
Daniel Kirwayoのギター作品。
1970年にペルーのアンカシュ県で大きな地震がありその地方の神聖な山が崩れて町の半分が埋まった。
死者7万人、行方不明者2万人。
「永遠の雪山」はその地方のシンボリックな聖山「ワスカラン」のことで、この曲は追悼の音楽だとKirwayoは言っていた。

9. Mujer ingrata (Folklore Andino)
気まぐれ女
これはDaniel Kirwayoから教わった音楽だけど誰が作曲したのかがよくわからない。
Kirwayoと一緒に弾いていた時のスタイルで録音した。

10. Plegaria a un labrador (Victor Jara)
耕す者への祈り
チリのシンガーソングライター、ビクトル・ハラの代表作の一つ。
彼はラテンアメリカ諸国へ影響を与えた「新しい歌」という運動の中心的人物の一人で名曲をたくさん残している。
ビクトル・ハラは貧しいもののために歌い続け軍事政権下で暗殺された。

11. Cequia (Daniel Kirwayo)
水路
Daniel Kirwayoの曲。Sequiaは南部アヤクーチョ地方の祭りの音楽で、この曲はその祭り(水の祭り)の音楽をモチーフに作曲されている。
農村にとって水は重要なもので、この祭りでは水が流れる水路を掃除する。掃除(作業・仕事)には仕事歌が伴う。
有名な「ハサミの踊り」もこの祭りで踊られる。

12. Tres waynos (Tradicional Andino)
3つのワイノ
アンデスの古典的な舞曲「ワイノ」のメドレー。
1曲目はホセ・マリア・アルゲダスの採集した「村の山」
2曲目は「フクロウ」
3曲目は「グリンピース」
どれも伝承曲。

13. Mauka zapato (Tradicional de Ayacucho)
古い靴
アヤクーチョ県のワマンガ町に古くから伝わる民謡。
歌詞は
まるで私はあなたの家の隅に転がっている古い靴
新しい靴が痛くなる時だけ私を探す
貧しければ鳩も泣く
愛が終われば私も泣く

14. Mi Chagrita caprichosa (Benjamin Aguilera)
気まぐれなチャグリータ
エクアドルのサン・フアニートというリズムによる音楽。
以前エクアドルで演奏しないかという話があり、その時にエクアドルの曲を弾いてみようと思った。
結局エクアドルに行くという話はなしにはなってしまったが、その後この曲はたまにコンサートで弾いている。

曲目表:
1. Paqcha sirena(人魚の歌)Tradicional de Ayacucho 2:16
2. Hierba silvestre(野草)Edith Lagos/Luis Salazar 4:02
3. Jauja(ハウハ町)Juan Bolívar 2:43
4. Hualchaquito(小鳥)Tradicional de Ayacucho 3:34
5. Paseo pin(ピンの散歩) Shin Sasakubo 2:35
6. Lilium maculatum thunb (ユリの記憶) Shin Sasakubo 5:15
7. Llorando se fue(泣きながら)Ulises Hermosa 7:10
8. Nevados eternos(永遠の雪山)Daniel Kirwayo 4:22
9. Mujer ingrata(気まぐれ女)Folklore Andino 4:38
10. Plegaria a un labrador(耕す者への祈り) Victor Jara 3:15
11. Cequia(水路)Daniel Kirwayo 4:00
12. Tres waynos(3つのワイノ)Tradicional Andino 5:16
13. Mauka zapato(古い靴)Tradicional de Ayacucho 3:55
14. Mi Chagrita caprichosa(気まぐれなチャグリータ) Benjamin Aguilera 3:47

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