1929年から78回転SP盤にレコーディングを残してきた、女性歌手兼ギター奏者オルガ・プラゲール・コエーリョ。2008年に98歳で鬼籍に入られてからちょうど10年。オルガの全盛期の貴重な録音をCDにコンパイル。
1909年マナウスで生まれ、1923年からは当時の首都リオ・デ・ジャネイロにて音楽院などで学び詩人のガスパール・コエーリョと結婚。ドイツ・ベルリンで行われたオリンピックの式典に出演(1936)した後は、欧州各国で公演を行いそこにクラシック音楽家のバルトークも訪れたと言います。その後はニュー・ヨークに移住、エイトール・ヴィラ=ロボスと米国政府を表敬訪問したり。そしてオルガは当時の羊腸から作られるガット弦に代わり、世界でいち早くナイロン弦を用いたギター奏者でもあります。
当時のマイクは薄い金属を振動させるリボン・マイクという形式。しっかりと歌を吹き込むには、オペラティックな発声をするしかなく、そのことが生み出した独特なメゾ・ソプラノの歌唱は持ち前の美しいビブラートと相まって、極めて上品。そして晩年はギターのマエストロ、アンドレス・セゴビアと蜜月の関係にもなり、名器ヘルマン・ハウザーを用いたギター演奏も素晴らしい腕前です。早口のマシンガン歌唱が愉快な”A Mosca na Moça”(1929)や”Dança do Caboclo”(1949) 、ブラジルのトラッドに加筆したような楽曲、ショーロ的なギターに美声が堪らない”Bahiana”のような自作、往年の野球ファンなら涙を流さずには居れない” Vamos Ponce” の原曲、メキシコの民謡”La Cucaracha” や スペインからアルゼンチンに亡命した音楽家マヌエル・デ・ファリャの作品をアンドレス・セゴビアがアレンジした”Asturiana”や”Nana”、引退する前、晩年の”Xangô” (1960)など。ギター一本と肉感的な歌声のみで体現される驚きのパフォーマンスの数々。(サプライヤーインフォより)