フツーのルークトゥンかと思ったら、タイ深南部の盲目の男性SSW(キーボード弾き語りも)でした。その名はノーンディアオ、2011年作サードCDです。この人、以前、当店にもMP3CD(50曲入り)で、ごく少量入荷したのですが、その際「CDはリリースされていないそう」なんて言ってしまいましたが、この度、CDで入荷したのでした(すみません!〜コンサート会場とかで売っているそーです。シマ君感謝!)。
タイ深南部3州、マレイシアとのボーダー地帯で起こったムスリム系住民と仏教系住民による紛争の悲劇を歌った7曲目(「今夜中にこの曲を書き上げる、そして来年は人々のもとに平安が訪れることを願う」そんな歌)がヒットし、タイ全国区で聞かれるようになった歌い手とのこと(ちなみに、このノーンディヤオは仏教徒系かと思われます)。ある意味、タイムリーな曲であり話題を呼んだのでしょうが、でも、歌詞内容でヒットしたというよりは、その歌声の素晴らしさがあったからこそでしょうね。タイ深南部のサザンな歌声、なんかもう涙ものですよ、タイのサザン・ソウルとでも呼びたいほど。ことにヒットした7曲目(youtubeリンク参照)で聞かせるその節まわし、抑制されたディープさは、静かなる絶唱とでも? 呼んでみたいと思います。今、タイのフツーの民謡系POP〜ルークトゥン等において、これだけ聞かせる男声歌手、いったい何人いるでしょうか?
やや緩やかめなミディアム or ミディアムスローな10曲が収録されている本作ですが、その演奏にしても、いわゆるルークトゥン標準とちょっと違うように感じるのは(曲によってダブルリードのチャルメラみたいな管楽器がフューチュアーされるところなど)、タイ南部で盛んな影絵芝居 “ナインナン” の演者の伝統音楽的要素が溶け込んでいるからでしょうか?(※ “エル・スールのサイトのコメントに「影絵芝居 “ナインナン”」とあるのは、人形遣いのナイ・ナンと影絵芝居のナン・タルンを勘違いしたものと思います”と>こちらでご指摘いただきました〜慎んで訂正致します。ちなみに”ナインナン” は “ナイ・ナン”の演者のことを意味する言葉だそう、ややこしい間違いをしてすみません!) このノーンディアオ、youtubeで見る限り、もともと<ナイ・ナン←誤 / →正 “ナン・タルン”> の演じ手でありスクリーン裏バンドの歌い手だった人かと想像できます。その辺の出自、というか音楽的な要素も実に興味をそそるところ。