20世紀後半、唯一アマリア・ロドリゲスのライヴァルと目されたファド歌手、マリア・テレーザ・デ・ノローニャ(1918-1998)~と言っても、当時、日本ではほぼ無名に近い女性歌手でした。それというのも、70年代半ばに早々に引退してしまったからでしょうか。というのも、中世ポルトガル王家の末裔につながる伯爵夫人 だったそうですから、何が何でも歌う、みたいな歌手としての意欲は薄かったかも知れません。とはいえ、この引退前の1972年ヴァレンティン・カルヴァーリョ音源オリジナルLPの復刻盤(〜以前EMI盤CDとして出ていたそうですが、2007年にソンリヴリからリマスター盤としてリリース。が、すぐに品切れとなっていたようで、当時気づきませんでした。で、このほど目出度く再プレス、ということでしょうか?)、〜アマリアと較べるなら、ディープさには欠くものの、その節まわしは伸びやかで清冽、女性らしいメリスマを聞かせる素晴らしいファド歌手であることは、間違いありません(しかも、若い頃とほとんど変わらないその歌い口、ヴェテラン歌手にあるまじき瑞々しさを生涯保った人でした)。もちろん、いかにもファド・ハウスやカフェに似合うアマリアの港唄っぽいディープなファドもOKですが、このノローニャの清々とした印象のサウダーデ、引き込まれますねえ…。もっと聴かれてしかるべきファドの名盤と言えるでしょう!
△というわけで、全部聴けます。
▽若き日のノローニャ、うつくし。