IBRAHIM MAALOUF / DALIDA BY IBRAHIM MAALOUF

南イタリアはカラブリア人の血筋ながら、エジプトはカイロへ移住した両親のもとに生まれたダリダ(1933-1987)、後年フランスへ移住、歌手そして女優として活躍したことは有名ですね。晩年は幾つかの恋に破れ自ら命を断ったということですが、フランス語、アラビア語、イタリア語、英語、ドイツ語でも歌い、そのエキゾティックな歌姫としてのイメージは、洋の東西を問わず知られたことと思います。そんなダリダの数あるヒット曲を、レバノン人トランペッターのイブラヒム・マルーフが、密に再解釈、アレンジし直したトラックで、仏人ながらモロッコで生まれのシャンソン作曲家、アラン・ソションに歌わせたり、フランス育ちのマリ人、ロキア・トラオレに歌わせたり、マヌーシュ・ギタリストにして男優、ジャック・デュトロックとフランソワ・アルディの息子であるトーマス・デュトロックに歌わせたり、欧州でも活躍するイラン人女優、ゴルシフテ・ファラハニに歌わせたり、イブラヒム自身も歌ったり、という新作アルバムがこちら。結局、この試みがどこに発するのかと言えば、それは、ダリダという女性が辿った歌い手としてのあり方、パリのイタリア系エジプト人として、人種や国境というものの意味を希薄にするようなその歌のあり方を起点としているんでしょうか?…、ま、そんなイブラヒム・マルーフの試みが、趣向はともかく音楽として面白いかどうかは、ま、聴き手しだいということに。

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