HOUCINE SLAOUI / THE FATHER OF MOROCCAN CHAABI



モロッコの “シャアビ” の世界で、DESERT JAZZ さんも喩えていらっしゃるように、ブルースでいえばロバート・ジョンソンのような存在、ホスィン・スラウイの作品集を作ってみたいというお話は、
随分前からお聞きしていましたから、まずは、おめでとうございます、と言わせていただきます。

10年という時間をかけて、こういう世界に誇れる仕事を、個人として成し遂げる情熱に頭が下がるばかりですが、何より初めて聞かせていただいたホスィン・スラウイの、音楽として、歌としての素晴らしさに驚かされました。なるほど、DESERT JAZZ さんが、魅了されたのも頷けます。いずれ CD が出来上がったら聞かせていただくつもりで楽しみにしていましたが、今月(2021年4月)に入って、ご自身のHPで展開されていらした>★ホスィン・スラウイ徹底研究連載 を読ませていただき、いやが上にも期待は高まってしまったわけです。が、実際に聴いてみればその内容、まったく期待以上の内容(ほぼ1940年代録音のはずですが、音質は最高です!)、正直びっくりしました。

う〜ん、こんなことなら、個人の仕事とし完成させたいというDESERT JAZZ さんを、飲食接待を繰り返してでも説得籠絡し、当方 EL SUR RECORDS からリリースさせてもらえば良かったと、後悔先に立たずです。なんちゃって…

生前のホスィン・スラウイは、主にパリで歌っていたようですですが、この1940年代のパリ録音、時にアルジェリアン・シャアビのモハメッド・エル・アンカみたいな節まわしを聞かせたり、アラブ古典歌謡からの流れも感じられ、アラブ・アンダルース的な旋律も聞かせもし、しかも後年のモロッカン・シャアビのリズム感の胎動、ライス(ルワイス)のような語り口〜歌い口も聞こえて来る内容。とにかく、聴けば聴くほどに様々な発見があります。
何というべきか、それ以前のマグレブ、アラブ世界で行われていた様々な歌謡音楽と、その後、展開することになるモロッカン・シャアビの結節点を、たった一人で体現しているような、そんな印象を持ちました。ま、要するに、ロバート・ジョンソン的、ということになるでしょうか、存在として…。

手作り感ある素晴らしいCDジャケ、素晴らしい音質、世界初となるホスィン・スラウィに関する長文バイオ&その音楽研究をしたためた解説も付いています(HPで展開された★ホスィン・スラウイ徹底研究連載 の要点を書き下ろしたものですが、インターネット上でも、これまで英仏文はおろか、アラビア語でもたった数行しか、ホスィン・スラウイに関する文章はありませんでした)。これは、もう、当店顧客の皆さんには、絶対のオススメCDと言わせていただきます!

>こちらでも紹介されています!(無断リンク陳謝&感謝)

以下、DESERT JAZZ さんHPのCDリリース告知を転載させていただきました。


■ホスィン・スラウイのアルバムが遂に完成!

 長らくお待たせしました。ホスィン・スラウイの CD がやっと出来上がり、彼の 70回目の命日である本日 4/16 にリリースです。

 Houcine Slaoui “The Father of Moroccan Chaabi” (Good Old Noise, DJ-001)

 モロッコの旅で出会ったこの素晴らしい音楽家のことを、少しでも広く知ってほしい、そして自分自身もっと知りたい。そのためには彼の代表曲をコンパイルしたアルバムを作って、いろいろな人に聞いてもらうことが有効なのではないか。そのことで新たな情報を得られるかもしれない。そのように考えたのは、今から8年前。これだけ偉大な音楽家なのに、世界のどこにもまともな CD がないなら、もう自分で作ってしまえと決めたのです。

 しかし、実際始めてみると、全てが初めてのことで、予想を超える大変さ。途中、何度も諦めかけることに。音源収集、資料探索、文献精読、楽曲考察、盤起こし、ノイズ・リダクション、マスタリング、選曲、翻訳、パッケージング、デザイン、ライナーノート執筆、等々、結局10年がかりの作業になりました。

(ノイズリダクション/マスタリングに至っては、繰り返すこと 50回以上。音処理は最小限にしたのだけれど、それでも納得が行かず、マスターを納品する数日前に、3曲ほど使用音源をノイズの多い方のレコードに変更して盤起こしからやり直し。マスタリングによって音の艶がわずかでも損なわれるのが嫌だったので、音に芯のあるものを最終的に選択。)

 時間はかかりましたが、多くの方々にご協力いただき、ようやく形になりました。デザインは、ジャケットの木版画の制作を依頼した福田新さんら、お三方にお願い。歌詞の聞き取りと曲名の日本語表記に関しては、ウアムリア奈津江さんとお仲間にご尽力いただきました。CD 制作全般については、たくさんの方々に相談。中でも、高橋政資さん、原田尊志さん、森田潤さん、井口寛さんからは、とりわけ多くのアドバイスをいただきました。

(デザインに関しても、細かな修正をギリギリまで何度も何度もお願い。みなさん、本当に根気強くお付き合いくださいました。)

 その結果、ホスィン・スラウイの命日(没後70周年)の 4月16日までに、どうにか完成させられました。たくさんの友人たちが手助けして下さったおかげで、当初考えていたよりもずっと良いものになったと思います。改めて感謝申し上げます。

(勿論、心残りもあります。音の状態とアルバムの流れを考慮して落とした曲は多数。ライナーの内容に関しては、モロッコ音楽の基本情報について自信がないですし、ホスィン・スラウイの経歴と録音歴についても、どうしても特定に至たらなかったことが多々ありました。今もずっと検証中なのですが、「41年頃から50年までの約10年間の録音集」と捉える方が正しかったのかも知れません。ですが、まずはこれらの音源を世に出すことが優先と考えました。マスター制作からライナー執筆まで一人でやり切り、その上、DDP ファイルの制作やジャケット・デザインまでも自ら行う準備を進めていたため、力及ばず。とにかく、状態良い SP もライナーを書くのに十分な情報も集めきれなかったので、今回はこれが自分の限界。ですので、この CD は「現時点での中間報告」としてお聴きください。)

 現在、協力して下さった方々と友人たちに、完成した CD を順次お送りしているところです。お手元に届くまでしばしお待ちください。ホスィン・スラウイの音楽の面白さ、素晴らしさだけは、確実に記録できたと思っています。また、この音楽家の偉大さと重要さを伝えるものを、世界で初めて作れたことに満足し安堵しているところです。お忙しい中恐縮ですが、一聴いただけたら幸いです。


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