これが最後になるんじゃないんでしょうか?と、言ってしまっていいのかどうか…。この11月で82歳のフェイルーズ、7年ぶり、2017年リリースの新作です(録音そのものは、2015年80歳の時だそうです)。
で、この欧州盤、冒頭曲が「オールド・ラング・サイン」~日本で言うところの「蛍の光」で始まっていて、う~ん、なんともラスト・アルバムっぽい予感がいやましますが…、続く2曲めはジョン・レノンの「イマジン」、そしてバーブラ・ストライサンドの「ザ・ウェイ・ウィ・アー(追憶)」が続きます。…ほか、ボサノーヴァ風の 「ラミーン」は、今亡き元夫、アッシー・ラハバーニー(1923-1986)がジルベール・ベコーの持ち歌にインスパイアーされて作曲した未発表曲らしく、更には「マイ・ウェイ」とか「ベサメ・ムーチョ」とか、けっこうベタな曲も並んでいるカヴァー曲アルバム。だがしかし、その歌声、シンプルかつ透明感のあるバックの中で、決してベタには陥らず、そのアラビア語の歌いまわしにおいて、なんだか新鮮に響くのはなぜなんでしょうね? 思えばアラビア語で歌っているにしても(これまでにもラテンや洋楽風の曲は多々ありましたが)、作品全体として、フェイルーズの洋楽風アルバムというのは初めてになるかと。でも、持ち味ですね、純アラビックな人ではなかったと改めて思います。
…正直、歌声の振り幅は高音域に至らず、声量も少しばかり足りない印象、ま、もともとフェイルーズの歌は、メリハリとかアクセントとか動きとか、そういうところで聞かせるというより、揺らぎとか、ふるえとか、余韻とか、そういうところで魅力を発揮する微妙な持ち味に魅力が…。なので、ただ単純に、衰えたとは言えない境地が聞こえるような気もします(そう思いたい?)。それにしてもパワー0%、その力の抜け具合、粉雪のように静かに揺れながら中空に漂うメリスマ? その唯一無二の歌声の存在感に関しては、未だ健在と言わざるをえませんね。
>http://bunboni.livedoor.blog/2017-11-21 題して<「マイ・ウェイ」新解釈 フェイルーズ> 面白いですねえ(無断リンク陳謝&感謝)!