「このアルバムは、時の流れに痕跡を残した3年間の私の人生をカバーしています。私たちの風景であり、私が熱心に巡る大きなバザールを反映する12曲。断固として祝祭的で陽気なこのアルバムは、放浪、選択、転倒、闘争、探求についての音楽です。私たちの道を養うもの、イラン、フランス、北アフリカ、そして世界の溝の間で、私は今や “バザーリ” になることを確信します。」というのは、このアルバムに対する本人コメントのネット直訳そのままですが、まったくもって、よくわかりませんね?でも、その音、何だか、ちょっと、ワクワクしますねえ(ラシッド・タハとか、ONBとか思い出しましたよ)!ということで、速攻売り切れてしまいましたが、とりあえず、お聴ききになってみて下さい。
〜で、昨日、マルセイユ在のアルジェリアン、たまに当店に CD を持って来てくれる日本贔屓のサプライヤー氏が観光目的で来日し(注・今回は CD 頼んでなかったので、持って来てくれませんでしたけど)、ついでに来店してくれたので、ところで、このアラーシュ・サルケシキ(?)、在仏イラニアンらしいんだけど、知ってる?と聴いたら、確か、アシッド・アラブやソフィアン・サイディなんかともいっしょに演ってたんじゃない?とのことでした。なるほどねーと思いましたが、その後、調べてみたら、アシッド・アラブではなくて、スマッジといっしょに演っていた模様、サイディとの関係はよくわかりませんでした。が、ま、そーゆー路線であることは確かですよね。で、…詳しくは、再入荷してから、とうことで。
〜とか言ってたら、再入荷して来たのでした。
ファーストは 2018年作(当店未入荷)、6年ぶりのセカンドということになるようです(09年にはビッグ・ウクレレ・シンジケートに参加しデビューしてますから、結構、長いキャリアの持ち主ですね)。その1作目、Youtube で聴いてみたら、やっぱり悪くないんですが、ウードやギター弾き語りを軸とした音作り、なかなかシミジミとしたブールっぽい作りのアルバムでした(注・ブールというのは、アルジェリア、モロッコ、チュニジアの移民、もしくは移民の両親のもとに生まれたフランス人の俗称)。でも、本作の方が断然、吹っ切れてますねえ。同じイミグレとして、生まれはイランながら、イスラム革命後の混乱を逃れて80年代に渡仏した両親のもとで育ったアラーシュ・サルケシクが、イラニアンとして孤立しながら、フランスで生きる自分の気持ちの所在(というか音楽的アイデンティティ)を、マグレブ系のブール(あるいは、フランスに生きるカリブやアフリカ系の移民)の音楽に見出して行くことは十分納得できます。
そんな移民街のバザールのあり方、日常的でありながら祝祭的でもあるその光景、その雰囲気をアラーシュなりに音楽に投影して生み出した本作、なのかも知れませんね(というのは、文頭に挙げた本人弁、よくわかりません、と書きましたが、よくよく考え、そう納得した次第)。なるほど、その多元的なアイデンティティの自由、みたいなものが伝わって来る作であることは、確かじゃないかと思います。
ちなみに “バザール” という言葉はペルシャ起源だそうです。表題 “BAZAARI” は、ネットで調べてみると、ソマリ語とありましたが…
以下、ネットで見つけた他のインタビューの末尾で、アラーシュ・サルケシクは、こうも言っていました。
「子供の頃、幸せに暮らしていたペルシャの色彩が生き生きと蘇ります。わたしはまた、モロッコからカボヴェルデ、レバノンからグァドループに至る音楽と人間との出会いによって育まれた多元的な存在であり、そんな、わたしのすべてをこの作品に注ぎ込みました。音楽は、常に、そして永遠に、多幸感、美しさ、自由とのつながりを提供してくれます。」
▽全部聴けます。