ALDINA DUARTE / TUDO RECOMEÇA

そのデビュー・アルバムは2004年作、37歳の遅咲きでした。本作は去年22年リリースの通算8作目となる最近作、再入荷となります。
アルディーナ・ドゥアルテ、1967年リスボン生まれ、父はポルトガル独裁政権下の兵士であり、ポルトガル領アフリカ独立戦線に派兵され亡くなってしまったそう。子供時代を厳しい環境にあって過ごし、20代半ばには、ロック・バンドのヴォーカルを経て、ラジオ番組やドキュメンタリー映画、舞台関係の制作会社で働くようになりました。そんなある日、ファド・ハウスでのインタビュー取材を担当、取材後も何気なくその場に残りファドを聴いていた時、激しく惹きつけられ、突然のパニック状態の中、自分もファド歌手になると決心したそうです。その夜のインタビュー相手だったファディスタ、フェルナンド・マウリシオ(1933-2003)や、ベアトリス・ダ・コンセイソン(1939-2015)に、どうしたらファド歌手になれるか?と問い、貴重な助言をもらったとも。その後、ベアトリス・ダ・コンセイソンに歌を学んで後、ファド・ハウスで歌うまでになったそうです。
なるほど、そうと知ってみれば、この人の歌、決して洗練を目指す歌ではありませんね。独り語りするようにも、嗚咽を押しととどめるようにも聞こえるその歌声、感情的な昂りを抑えつつも、息継ぎからさえ漏れ聞こえる情念、そんな、生々しい歌い口は、昨今のファド歌手の誰とも似ていないような気がします。ポルトガルならではの弦の交わりが描き出す哀調の波間に、心の奥底から浮かび上がるようなサウダーデが深い余韻を残します。
前作(2019)ではアマリア・ロドリゲスやノローニャをはじめ、歴代のファド歌手たちが取り上げてきたスタンダードを、自分なりの伝統スタイルで歌い、その本領を存分に発揮していました。まったく、おみそれした、という仕上がりの作でしたが、こちら22年作は本作のための書き下ろし曲が中心、ドゥアルテ自身も3曲を作詞、加えて自らプロデューサーもつとめる意欲作となっています。伴奏はギターラとヴィオラだけの伝統スタイルで、ギターラはアントニオ・パレイラの息子パウロ・パレイラが弾いています。
それにしても、ギターラもヴィオラも、ヴォイスも、目の前の音のように聞こえて来て、マスタリングもミキシングもレコーディングも、実にイイ仕事をしているのは、プロデューサーを自らつとめたアルディーナ・ドゥアルテ自身の差配でしょうか、それとも、スタッフ&周囲のドゥアルテへの共感がそうさせたんでしょうか…

1 Ela
Lyrics & Music – Manel Cruz
2 Paraíso Anunciado
Lyrics  – Aldina Duarte
Music  – Francisco Viana
3 Clausura
Lyrics  – Aldina Duarte
Music  – Armando Freire
4 Estação Das Cerejas
Lyrics  – João Monge
Music  – João Maria dos Anjos
5 Sem Cal Nem Lei
Lyrics  – Maria Do Rosário Pedreira
Music  – Armando Machado
6 Rasga O Passado
Lyrics , Music  – Álvaro Duarte Simões
7 Auto-retrato
Lyrics  – João Ferreira-Rosa
Music  – Alfredo Duarte
8 Muro Vazio
Lyrics  – Aldina Duarte
Music  – Carlos Da Maia
8 Uma Outra Nuvem
Lyrics  – José Mário Branco
Music  – Miguel Ramos
10 Antes de Quê?
Lyrics  – Manuela De Freitas
Music  – Raúl Ferrão
11 Cachecol Do Fadista
Lyrics  – João Monge
Music  – Miguel Ramos
12 Improviso Em Ré
Arranged  – Paulo Parreira, Rogério Ferreira (Guitarrada)

Classical Guitar – Rogério Ferreira
Portuguese Guitar – Paulo Parreira
Producer – Aldina Duarte
Voice – Aldina Duarte

Co-producer, Recorded & Mixed – Joaquim Monte
Mastered  – Hélder Nelson

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