夏の間、ずっと録音していたそうです。1950年生まれだから、今年で64歳、2014年10月のスタジオ録音新作(トータル37作目?)となります。既に Greek itunes ではダントツTOPのダウロード回数だそう。前作が12年12月リリースでしたから、以前よりは短いスパンのスタジオ録音の新作ということになります。旺盛な制作意欲、ファンとしては大歓迎ですが、加えて内容の方も前作の延長線上、まったくもって意欲的です。若き詩人(ハリスとは初遭遇)のニコス・モライティスの詞を10トラック全曲で歌っていて、その詞に曲をつけアレンジ / 演奏等で参加している若き3人の男達と一つのバンドとも初顔合わせ、前向きに若い世代との共演を楽しんでいる、そんなアルバムでしょうか。
ブルースともロックともライカともレベーティカとも呼べそうな、よく練られたアレンジ、そんな曲想の並びにまず耳が行ってしまいます。これまでのハリスのアルバムどころか、グリークロック作品においてさえ、あまりお目にかかれないような斬新なその演奏がまず素晴らしいですねえ。ギターやブズーキやドラムス、ストリングス・アンサンブルを中心に、キーボード、スティールギターやブルースハープから金管まで聞こえる生音バンド感覚による隙間あるアレンジのまとまりが見事で、そこに、実にブルージーでありながらギリシャ的としか言いようのないメリスマティックなハリスの歌い口が聞こえれば、もう何はともあれ満足。そして、その放り投げた節まわしが放物線を描き沈み込んで行くような、憂愁と諦観に溢れるハリスのダウナーな歌声にもかかわらず、眼を閉じて聴いていて瞼に浮かんで来るのは、本CDジャケのシルエットそのままに、上を向いている、遠く空を見上げるようなハリスの横顔なんですねえコレが。そして、アルバムタイトルは “夢をもう一度” と来た。こんな素晴らしいプラウドリーかつハードボイルドな熟女が一国を代表する大スタアであり続けているのは世界広しといえギリシャだけでしょうね!今作もまた、長く楽しめそうなCDじゃないですか…。