V.A. (Pleng Kar Boran Ensemble) / CAMBODIAN FORGOTTEN SONGS VOL. 1

これまた面白いですねえ、キクチ夫君がプノンペンで買い付けてくれたCDです!!
本盤をリリースしている “Bonapha Center (ボファナ視聴覚資料センター)” は、プノンペンに設けられた視聴覚センター(非営利施設)で、クメールルージュのために破壊されたフィルムやTV映像、あらゆる録音物や写真、絵画等を修復復元し、公開している施設だということです。つまり、クメールルージュ以前の音楽や映像を復元することで、失われた過去を取り戻す一助とすることを目的に運営されている施設ですね。
本CDは08年の録音(09年リリース)にて、ボナファ・センターの運営資金とするために販売されているCDで、その内容は英題通り『失われたカンボジアの歌』ということに。…でも、失われた歌がどうしてCDで聴けるのか? といえば、それは、1921年に仏インドシナ研究機関(Sociétédes Etudes Indochinoises, 1883-1953)により出版された書籍、およそ100曲のカンボジア古謡が採譜され歌詞も網羅した “Cambodian Songs” に基づき、08年当時の現役プロフェショナルな伝統音楽家達10人ほどが1年をかけ再現した録音ということになります。まさに労作でしょう。
トロー・チェー(胡弓)、クロイ(縦笛 / 竹)、ロニアット・エック(木琴)、チュン(小型シンバル)、チャーペイ(月琴)、スコートゥーイ(太鼓)等によって演じられる、なだらかに高低上下し反復されていく演奏も、酔って歌い語るような男声独唱、もしくはしみじみしているようでいて騒がしいようにも聞こえるユッタリとした合唱も、まさにカンボジア!テンポやメロディーなど、婚礼音楽 “プレーン・カー” にやや似る曲もあります。あるいは、月琴の演奏が聞こえると吟遊詩人コン・ナイを思い出したりもします。太鼓のリズムには初めて聴くような面白さを感じさせるものもあります。
ま、自分のような者にとっては、この録音がそのまま、百年以上前のカンボジア古謡の再現であるかどうか、確証を持って聴くことは難しいのですが、その形やスタイルはともかく、コレまで聴いた中でも最上級の野趣に富み、より奔放な男声&合奏の魅力に引き込まれ、在りし日のカンボジア古謡の面影がオボロに伝わって来るような気がすることは確かです。

1. Kânchha Vil (POPPY)
2. Phot Chong Chrôi (Extremity of the Point)
3. Lolok Sâr Leo (Laos White Turtle Dove)
4. Po Pek (Uncle Pek)
5. Sarômê
6. Srângè (Wild Rice)
7. Kombèp
8. Lolok Sâr Khmer (Khmer White Turtle Dove)