2014 BEST 10 ALBUMS, FUJI-Qのスーさん

MARIABETHANIA2014

MARIA BETHANIA/MEUS QUINTAIS
HARIS ALEXIOU/TA ONIRA GINOUTE PALI
TINARIWEN/EMMAAR
PAPA WEMBA/MAITRE D’ECOLE
QUINTETO TATI/EXILO
INCESAZ/GECSIN GUNLER
BIRSEN TEZER/IKINCI CIHAN
HK/HK PRESENTE LES DESERTEURS
HASSAN HAKMOUN/UNITY
AIT MENGUELLET/ISEFRA

【番外】
CAFÉ BOHEMIA~RELAXIN’ WITH SISHA ~MIXED by SALAM UNAGAMI
吉田美奈子/WITHIN~VISION3
JONI MITCHELL/LOVE HAS MANY FACES (4CD)
HABIB KOITE/SOO
TOUMANI & SIDIKI DIABATE/TOUMANI & SIDIKI

【寸評】
とてもバタバタ公私ともに多忙を極めた2014年は、音楽には殊の外、癒やしを求めた。「包まれて気持ち良い」「身を委ねるとホッとする」というようなサンクテュアリーを探し求めた。とりわけ居心地が良いのは、「女声」に限るというわけでもないが、女性ボーカル・アルバムが上位を占める結果となった。
まず、癒し系女声の中でもその声に身を委ねて間違いないのは、MARIA BETHANIA。新作を一聴した限りは何か軽いなあと感じたのだが、余計な力が入らない軽やかな、それでいてしっかりと覚悟の決まった声に包まれるたびに、どんどん引き込まれる。とても幸福な時間が流れる。今年の1位に推したい。
一見静かな佇まいながら、確かな存在感を感じさせるのが、HARIS ALEXIOUの新作。若手ミュージシャンとの交流にも意欲的で、あたらしい感覚を取り入れながら、ギリシアの風土に培われてきた伝統の揺るぎない自信がみなぎっている。数ある彼女の作品の中でも長い付き合いを予感させる、地中海の風が吹き渡るような清々しい傑作だ。
少し前のライブということで番外としたが、声の力強さなら、吉田美奈子にも圧倒された。倉田信雄のピアノだけで聴かせるWITHIN~VISION3のヴォイスとピアノだけで創り出されるゴスペル空間は、ピュアで時に凄みすら覚える。
QUINTETO TATIは、移動遊園地を思わせる軽妙洒脱で、ヨーロッパのエスプリがあふれる世界は、小粋でどこか懐かしい。
INCESAZの8作目は、ゲストの女声ヴォーカルEZGI KOKERが素晴らしく、ノスタルジックなトルコを堪能できる。
HKは「サハラ・ミーツ・シャンソン」。PAPA WEMBAは「ザイレリアン・ルンバ・ミーツ・パリ」と、どちらもヨーロッパやパリのエキスをほとばしらせながら、発信地の匂いをしっかりと残す今年の顔にふさわしいアルバムに仕上がっている。
TINARIWENの新作は、もはや貫録を感じさせるルーズなノリで、サハラのギター・ブルースを牽引する。緩いんだけど決して弛緩しているわけではない見事なバンド・アンサンブルに魅了される。
BIRSEN TEZER というトルコのシンガーソングライターのソロ2作目は、ジャジーなバックを従えた落ち着いた大人の世界を展開し、哀愁を漂わせる。
HASSAN HAKMOUNは、グナワ・ファンクの傑作。HASSANのダミ声が渋く力強い。癖になるグルーヴがあります。
AIT MENGUELLETの新作は、これ新譜だったっけと思わず調べてしまうほど変わらないカビール系シャアビを聴かせてくれる。のびのびとゆったり展開される心地よいマンネリは悪くない。

番外編のCAFÉ BOHEMIA は、エキゾチックな良い曲ばかり詰め込んだビタミン剤のようなアルバムである。聴くたびに元気をもらえる。JONI MITCHELLの最新編集アルバム4枚組「LOVE HAS MANY FACES」は、あらためてジョニ・ミッチェルのアーティストとしてのクオリティの高さに気付かされて新鮮でさえあった。

2014年は、2013年に引き続きロックの記念碑的アルバムの丁寧なリイシュー仕事にあふれ、豪華な装丁を開いて当時を思い出したりするひとときは、確かに至福のひと時であった。しかし、この調子でいくと大人買いを大人げなく続けるオヤジ達は、毎年、このリイシュー攻撃を浴び続けるのであるから、今年のベスト10からは、あえて除外させてもらうことにした。(したがって、「THE ALLMAN BROTHERSのTHE 1971 FILLMORE EAST RECORDINGS」も「BOB DYLAN & THE BANDの THE BASEMENT TAPES COMPLETE」も「LED ZEPPELINのⅠ~Ⅳ」も「MOTOHARU SANOのVISITORS」などのデラックス・リイシュー・アルバムは選外とした。)

go top