KATERINA TSIRIDOU / AMAN KATERINA, A Tribute to Panayiotis Toundas


←簡易紙ジャケ廉価盤も売り切れです。

>こちらで、既に紹介されている盤ですね(陳謝&感謝)、やっと入荷してまいりました。ギリシャ大衆音楽の源となった戦前のレベーティカ〜戦後ライカの揺籃期にこだわり、ピアノ、ギターほかギリシャの弦楽器を弾きこなす才能豊かな女性歌手、カテリーナ・ツィリドゥ(1974-)の2015年作。ここで彼女が歌うのは、スミルナ派レベーティカ最高の作曲家とされもするパナギオオーティス・トゥンダス(1886-1942)が残した曲の数々となります。
パナギオーティス・トゥンダスは、トルコのイズミール(スミルナ)で生を受け、彼の地のギリシャ人のために音楽を演じたスミルネキ楽団(エストゥディアンティーナ)に属していましたが、1922年のイズミールの大火を経てギリシャへ帰還(住民交換)、アテネで作曲活動を開始、同じくトルコからの帰還者であるコスタス・ルーコウナスやローザ・エスケナジー、リタ・アバツィといった歌い手に曲を提供し人気を得て、ギリシャのSPレコード業界に根を下ろした作曲家でした。
ところで、タイトルにある”AMAN” が何を意味するかというと、いわゆる “アマネス”(あるいは “アマーン・ソング”)ということで、古くはオスマン帝国の版図の広がりの中、トルコはもとよりギリシャ、バルカン半島でも、地域によっては聞くことができたとされる即興的な導入を持つ歌謡スタイルのことを指します。「ああ、神さま」とか「oh my god!」というような意味あいで “アマーン” という歌いまわしを出だしに繰り返す、ある種、嘆き節とでも言えるでしょうか? その歌い手には女性も多く、彼女たちは男性に負けず劣らず街角のカフェやタヴェルナでアマネスを歌い継いで来ました(ピレウス派の歌い手がほぼ男性ばかりだったことと対象的です)。
本作収録曲は、既にパナギオーティスに作曲されたスミルナ派のレベーティカ曲として、創作歌謡の演目が並ぶからでしょうか、「アマーン」という独特に引き伸された歌いまわしは聞けません。が、その代わり、曲によっては冒頭の即興風歌いまわしや、前奏や間奏の器楽演奏に、アマーン・ソングの名残りを宿す工夫がされています(大戦前成立のギリシャ独裁政権がトルコ風の歌や器楽演奏を禁じたことに対するパナギオーティスの偽装工作?かも知れませんが…)。
ほか、いかにもスミルナ派らしいゼイベキコや、チフテテリ調の曲を中心に、ピレウス派のテケ(阿片窟)で生まれたマンガス風の曲調も挟みながら、パナギオーティスが戦前ギリシャで人気を誇ったこと、さもありなんと感じさせるだけの曲が並びます。
そして、そこに聞こえるのは、当代随一のレベーティカ女性歌手とされるカテリーナ・ツィリドゥの、少しカスレてディープに上昇下降の放物線を辿りながら、アマネスらしい奔放さもキープするディープな節まわし! そして、ギター、ブズーキ、バグラマーと、時にカヌーン、ヴァイオリンが加わるだけのシンプルにして揺れのあるギリシャらしい生演奏! ゲスト歌い手のアレッティ・ケティメ、久しぶりの歌声も嬉しく、男声の3人、カテリーナとデュオを取るザッカリス・カルニス、アガソナス・ラコヴィディス、加えてソロを聞かせるソティリス・パパトラジャニスも文句ナシのレベーティスぶり…、なるほど、ハードボイルドな名作であることに納得です!

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