マキオカナミ / シツルシマ

奄美シマ唄の美しきトランスフォーマー、牧岡奈美が放つ待望の3rdアルバム。
前作『南柯Nanka』では、即興を含む多彩なワールド・ミュージック的手法で新境地を切開いた喜界島出身の歌姫・牧岡奈美。約1年半ぶりにリリースされる新作『シツルシマ』では、その手法をさらに充実させ、ヴィヴィッドで色彩感にあふれた歌世界を繰り広げています。
収録曲は全曲が奄美のシマ唄と伝統歌。今回は牧岡奈美の出身地である喜界島の「八月踊り唄」を2曲(7「厄介なほめやべー」9「やんぐらさ」)収録しています。ちなみに喜界島の「八月踊り唄」がCDに収録されるのは歴史上これが初めてのこと。古くから伝わる「八月踊り唄」の中には、今では歌詞の意味が分からなくなった部分もあり、そのシマ唄とは異なる独特の節と共にミステリアスな雰囲気を伝えています。
タイトルの『シツルシマ』は喜界島の一集落「上嘉鉄(かみかてつ)」の昔の名称。上嘉鉄は喜界島の中でも「八月踊り」が盛んな集落として知られ、牧岡奈美をシマ唄の世界に導いた祖母・盛スミ子の出身地でもあります。この地は琉球王朝時代には「しつる村」と呼ばれ(漢字で「下水流村」という字が当てられ)湧水が多く豊かな水田が広がっていました。旧暦八月の歳替わりの節に村の収穫を祝って歌い踊られる「八月踊り」が発達した理由も、そうした背景があります。ちなみに「嘉鉄」は喜界島の南の果てにある湿地帯を意味する「果て津」が大和口に変化したもの。奄美大島南部にある同名の「嘉鉄」と区別するために、明治期に北に位置する「果て津」を「上嘉鉄」と変名しました。
多彩なサウンドを作り上げるバック・ミュージシャンは、前作『南柯』とほぼ同じジャバラのレギュラー陣。ピエール・バルーの愛娘まやバルー(フルート)、レゲエ・シーンではプロデューサーとして知られる森俊也(ギター、ベース)、最近では五つの赤い風船のメンバーとして活動中の竹田裕美子(ピアノ)、クラッシックの室内楽で活躍中のあずまけいこ(ヴァイオリン)、北海道出身のハワイアン系のギタリスト河西堅(ギター、ウクレレ、マンドリン)等々。レコーディングは例によってプリプロダクション一切なしのぶっつけ本番で4日間、譜面もほとんどなしという即興優先、超テンパリ状態で行なわれました。
牧岡奈美 Makioka Nami
1983年、奄美諸島・喜界島生れ。島に伝わる集団的な歌と踊り「八月踊り」の中心的な担い手である祖母・盛スミ子の影響を受けて、小学生の頃から「安田民謡教室」に通いシマ唄を歌い始めました。ところが、教室に通い始めると不思議な出来事が起きました。最初は子供たちそれぞれが自由な節回しと解釈でシマ唄を歌っていたのですが、間もなく全員が牧岡奈美の歌い方に変わってきたのでした。以降、現在に至るまで「安田民謡教室」のシマ唄は牧岡奈美の歌唱スタイルが歌い継がれています。小学生の頃に自らのスタイルを確立した牧岡奈美は95年に開催された「奄美民謡大賞」大会で優秀賞を受賞したのを皮切りに各大会で軒並み優勝を獲得。96年、ジャバラ・レコードのコンピレーション・アルバム『あさばな〜奄美しまうた紀行』(JAB-05)で初レコーディングを行ないます。99年には「鹿児島県民謡王座決定戦」で3年連続優勝を果たし、16歳の若さで「名人位」に選ばれました。02年に開催された「奄美民謡大賞」大会では最高賞の大賞を受賞。同年、喜界島の方言で「ありがとう」を意味する『うふくんでーた』(JAB-16)でソロ・デビュー。05年6月、セカンド・アルバム『南柯Nanka』(JAB-33)をリリース。これまでのシマ唄のイメージを超えた洋楽器中心の斬新なアンサンブルと表現力豊かなヴォーカルが高く評価されました。06年には奄美の若手アーティストを集めたコンピレーション『マジムン』(JAB-34)に参加して奄美のレゲエDJ、バナナマフィンと共演。現在は奄美看護福祉学校で教職に就きながら音楽活動を続けています。  (メーカーインフォより)

1. 曲がりょ高頂
2. あさばな
3. 正月着物
4. 行きょうれ
5. らんかん橋
6. 花染
7. 厄介なほめやべー
8. 嘉徳なべ加那
9. やんぐらさー
10. 稲摺り節
11. 側家戸節
12. 豊年節
13. 船ぬ高艫

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