2014 BEST 10 ALBUMS, 戸嶋 久さん

【2014年間ベストテン、新作篇】

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1. HK『Présente Les Déserteurs』
在仏アルジェリア人であるHK(アッシュ・カー)のソロ作。基本的にシャンソン・カヴァー集だが、全てシャアビ・マナーでやっている。アラブの粋を示した大傑作。

2. v.a.『Girizgâh, Alaturka Records』
トルコの古典歌謡復興もここに極まれりという二枚組。20世紀初めのSP音源から復刻して現代に蘇らせている。微分音で仄かに揺れるメリスマがたまらない。

3. Noura Mint Seymali『Tzenni』
モーリタニアの女性グリオのワールド・ソロ・デビュー作。ノウラの力強い歌がなんといっても素晴しいけど、旦那の弾くエレキ・ギターもサイケでトランシー。

4. Orestis Koletsos『Me Plimmirisei Fos』
ギリシアのブズーキ奏者の一枚。曲毎に歌手を変えて、しっとりとした音楽を聴かせる。大傑作ではないけど、僕の大のお気に入り。

5. Leonidas Balafas『Apiliotis』
ギリシアのシンガーソングライターの二枚組。むちゃくちゃ渋くて地味だけど、滋味深い傑作。

6. Hassan Hakmoun『Unity』
今までのところのハッサン・ハクムーンの最高傑作。むっちゃカッコイイグナーワ・ファンク。痺れる。

7. Smyrna『Tha Tragoudiso Agalina』
楽器もやりながら歌う、ギリシアの女性グループ。ヴォーカルのポリフォニーが癖になる。

8. v.a.『Beauty of Tradition~ミャンマーの伝統音楽、その深淵への旅。』
日本人スタッフが現地ヤンゴンまで赴いて現地録音したビルマ伝統音楽集。入門にピッタリ。

9. Tinariwen『Emmaar』
大のティナリウェン・ファンの僕は、彼らのアルバムが出たらほぼ間違いなくベストテンに選ぶことにしているけど、今年の新作には他にいいものが多くて、ティナリウェンはこの位置になった。

10. Dr. John『Ske-Dat-De-Dat: Spirit of Satch』
スケールの大きなドクター・ジョンの傑作。サッチモ曲集だけど、サッチモを全く意識させないほど、全く新しい曲となって生れ変わっている。

【2014年間ベストテン、リイシュー・発掘篇】

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1. Yusef Al-Manyalawi『The Voice of the Nahda Era』
質量ともに2014年 のリイシュー第一位はこれしかない。20世紀初め、世界でも最も早い時期に録音したエジプト人歌手の十枚組。アラブ音楽好きは必聴。

2. Bob Dylan and the Band『The Basement Tapes Complete』
1967年というサイケ全盛期にこんな渋いことをやっていたセッションの全貌が分るようになった。数年後に華開くルーツ・ロックの源泉がすべてここにある。

3. Otis Clay『LIVE!』
年末に素晴しいクリスマス・プレゼント。届いてから毎日聴いた、オーティス・クレイの初来日公演。歌もバンドも絶好調。

4. ビルヒニア・ロペス『プエルト・リコのボレーロ姫』
これも素晴しいリイシューだった。こんな歌手が大好き。プエルトリコは歌の王国と言われるが、何度聴いても聴き飽きないその歌声にKOされた。

5. v.a.『African Gems』
文字通りアフリカの宝石とも言うべき、フィールド録音集。ヒュー・トレイシーの後継とも言うべき録音集だが、どれもこれも本当に素晴しい。

6. Gilberto Gil & Gal Costa『Live in London ’71』
こんな録音が残っていてビックリ。去年のMPBリイシューの最大の話題でしょう。ジルのロンドン亡命時のライヴ録音。ほぼ完全にロック。

7. パティ・ペイジ『ニッポン人が愛したパティ・ペイジ』
パティ・ペイジみたいな歌手はなかなか良さが分りにくいと思うけど、これで聴くと改めて良い歌手だなあと再認識。

8. v.a.『Haiti Direct: Big Band, Mini Jazz & Two Twoubadou Sounds, 1960-1978』
イギリスのレーベルから出たハイチ音楽の編集もの。今まであまり聴いてこなかったもの。

9. The Allman Brothers Band『The 1971 Fillmore East Recordings』
無編集のフィルモアを聴けた喜び。同じ曲を何回もやっているので、聴き比べるのも興味深い。

10. 笠置シヅ子『ブギウギ伝説:笠置シヅ子の世界』
笠置シヅ子はそんなに好きな歌手じゃないけど、この二枚組にはやられました。歌の強度に参りました。服部良一のソングライティングも文句なし。